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2024.06.04 木下佳通代展①

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中ノ島美術館で神戸出身作家の木下佳通代展へ。
前回のモネ展のような圧倒的な知名度は無いかもしれませんが、
個人的にはとても良かったです。
人の「認知」を刺激するアートたちでした。
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モノクロ写真があって、
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展示順に見ていくと徐々に紫色に彩色されていきます。
当然、塗られた箇所が目を引きますよね。
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半分くらいが彩色されていくと段々どっちが目立つのかがわからなくなってきます。
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最後のほうになると、目立たせるために塗った部分よりも、
塗らなかったモノクロ部分のほうが目立つように。
モノクロだった「地」があるタイミングで「図」へと変換しているのです。
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最後は塗った部分が全て「地」へと変換されてしまいます。
これが変わるタイミングは人それぞれで、多様性があって面白いと思っています。
建築でも同じようなこともあって、
壁を傾けていくと、いつかは床に変わるわけで、
その瞬間は人それぞれの認知へと委ねられています。
壁に貼るアクセントタイルも小面積だから目立ってアクセントと言えて、
面積が増えるにつれて図から地へとなり全体的な統一感を生み出す要素になります。
むしろ白いクロスで残った部分がアクセントになるかもしれません。
どちらが良い悪いではなく、こういう感覚を意識したり理解できているかが重要。
さらに、展示順に見るとモノクロからパープルへ着色していったという流れがありますが、
逆から見ていくと、パープルな画像をモノクロへ着色していった、という見方も出来ます。
展示されているアートには実は2方向の時間軸が仕組まれていて、
自分が最初に見た一連の展示は過去から未来かもしれないし、
本当は未来から過去だったのかもしれない。
日常の時間の流れはなかなか目に見えないものですが、
この作品たちが色々と気付かせてくれるきっかけになっています。
こういう認知に訴えかけるアートは極めて建築的でとても好きです。
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この作品も同じです。
上から下へと赤が増えて、最初は認知させる図としての赤色が、
段々と地へと変換されていきます。
下から見ると赤の地にモノクロの図を塗ったかのようにも見える。
建築もそうですが様々な物事には何かと何かが変わる狭間、「境界」に魅力が宿っているのだと思います。